洋服に関わる仕事の中で。

アパレル不況とまでいわれている洋服の業界。夢を持って今日も売場に立つ人達に向けた僕の知っている、そして30年に渡り経験してきた話。

常識の外側を考える。

「常識を覆すようなもの」それを考えながら今日も運営をしてる。常識を覆すと言っても、やっていける根拠を探らなければならない。それは僕自身が今までやってきた事の中にヒントがあるのだと思う。一言でアパレルと括ってしまうのは危なっかしいと前に書いた事があるけれども、そこを根本から考えなければならない。

 

そして最もよく精査しなければならない事は、需要と供給のバランスが合っていないという事にある。よく考えられて企画・製造された製品から、ただ売場を埋める為に企画された製品まで。はるかに需要を超える製品が現在も生産され続けているのが現状ではないだろうか。

 

市場が熟成した中で、新しいものを。そう考えるよりも、一から作り直しをしたほうが良いと感じているのは僕だけだろうか。「パーソナル」(個人的・個人用)という言葉を沢山の業種に見かけるようになったのだが、現在の仕組みでは、これを取り入れて、少し商売らしく展開するならばパターンオーダーのようなイメージになるのだろうけれども、単純にそれを取り入れるだけでは画期的な新しさは産まれない。

 

供給が上回っていて、資金が潤沢または予算のとれる企業がある限り現在のままでは、僕らのような地方の小売から淘汰されてしまう日は近いだろう。近いというよりも、それは始まっていて奇跡のようにまだ存在できていると思ったほうが良いのかもしれない。当然の事ながら、ロープライスゾーンを展開している企業の製品はクオリティが良くなっている中で、少ロットの日本製を製造し、消費者が見出せる価値を提供できたとしても消費者から見て何かの役に立つ事ができなければ、そこに見出せる未来は狭いものになってしまうだろう。

 

しばらくの間は、バイク、サーフィン、音楽などのわかりやすいコンセプトを立ててその区切りで嘘ではないストーリーを展開しながら集客はできると思う。しかし、世の中の動きによって、コンセプトを変える事ができないという欠点もある。そして、それが根本的な解決になるかと言えばそうではないだろうと思う。

 

そんなふうに考えていると、パーソナルである事、しっかりと根付くカルチャーである事、そして強い意志と言葉で伝える事が出来る事、そして常識を覆すようなものである事が必要なのだと考えている。

 

 

 

 

 

そもそも信頼されていないアパレル企業。

少し調べただけでも、大量のアパレル店が閉鎖されている。経営側からみれば、沢山ある店舗のうち不採算店を無くせば利益の確保ができ、資金調達もできると考えているのだろうけれども、店舗縮小の後に残された店舗だけで本当に利益を確保できるのだろうか。

 

根本的な解決無しに状況を良くする事は難しい。またある記事には、「ブランドを閉鎖すると、そのブランドの中古市場が活気付く」と書かれている。根本的な事の一つに、商品の価値が消費者に伝わっていないという事が考えられる。それ故、ブランドが閉鎖されるとモノとしての価値が向上するのは当たり前の事であって、そこが根本的な課題の一つだろうと思う。

 

では、モノの価値が伝わるようにするにはどうしたら良いだろう。これは、長年行われてきたブランドの嘘のコンセプト、薄っぺらいコンセプト作りが原因ではないだろうか。ある日突然改装に入った店舗が、改装後売場の入り口に古いハーレーダビッドソンを置いて、「昔から乗ってました」のような打ち出しをする。こういったやり方は、昔からそのコンセプトを貫いている店舗に失礼だと僕は思う。失礼どころか後者にとっての大切な小さなマーケットを荒らしているようにしか見えない。

 

「好きだ、得意だ、ずっと関わっていたい」という気持ちから始まったものと、「市場を見て稼ぐ為にはじめたもの」とでは当然熱量の違いがあり、前者の方が会社規模は小さくても圧倒的な信頼があるのは当たり前だ。勘違いしないで欲しいのは、良い、悪いという判断や評価ではなく、そうやって地方や都心であっても立地の悪い場所で大切に運営されてきた本物が大手によって潰されてしまう事への懸念である。

 

そして新たに台頭してきたのは、ローカルマーケットにおいての手作りだ。これは、作る側と買う側の距離が近く「信頼」で繋がっている。僕の知り合いにもレザークラフトを始めて18年になる姉妹がいるが、1ヶ月の注文数量を聞くと驚く数字だった。この事一つをとっても、企業は信頼を失っていると言う事が根本的な原因の一つである事は間違いない。「最初から信用していませんよ」というのが消費者のスタンスで、距離の近い作り手の台頭は、少々作りが荒くても揺るがない信用を獲得しているのだと感じる。

 

不思議に思う事は、何故この業界にはその全てを覆してしまうような経営者が現れないのかだ。2006年頃に、ある経営塾で僕はこう言った。「これからは心の時代です。ですからむやみに流行をつくったり、追いかけたりしても無駄。消費者と会話するように進めて行かなければ10年後に業界は破綻すると思う」その時の様子は言うまでもなく、苦笑いする経営者が殆どであった。

 

そんな事を考えると、大手よりも小回りのきく中小企業から新しい運営のモデルが確立されるのかもしれない。

 

 

 

小さな一歩

人は普段、自分の身体の一部であっても、殆どその部分を意識せずに過ごす事がある。よく使う手や足は、手が疲れた、足が痛いなどと気遣う事もあるが、額や眉間はどうだろう。毎日の生活で額を意識して過ごす事はほぼ無いと思う。

 

この業界に限らずどの業界でもそうだと思うが、普段気づかない場所に気づいていける事が第一に必要なのだと思う。何故なら、アパレル不況と言ってもそれを感じていない人達もいるだろう。それは実績をみて思うのではなく、ただ毎日の業務に追われて気づいていない事を指す。大きな流れや、専門家による数字的な分析もされているけれども、何かに気づいていく事は、売場に立つスタッフにだってできる事だ。特に店長と名の付くスタッフは沢山の事に気づいていく必要があるのではないだろうか。

 

大きな流れ、社会背景、他の同業者、流通在庫や消費者の動向ももちろん大切であるけれども、この業界が昔からの習慣から抜け出せないという病気にかかっているならば、一つ一つの小さな気づきが変化をもたらすのではないだろうか。小さな行動ではあるけれども、誰も何も行動しないのであれば何も変わらないという事実しか残らない。会社の上層部による大きな決断と今までに聞いた事もないプロジェクト。そういった大きな力に沿いながら、スタッフ一人一人が業界をリードしていくつもりで事にあたらなければならない。

 

僕自身の店舗では、準備が出来次第大きなプロジェクト1つと、小さなプロジェクト1つに取り組んでいく。小さなプロジェクトは、毎日注意深く観察した事をノートに書き留めた集大成でもある。もし、企業の末端であるスタッフの方から新しい小さな事を始めるのであれば、「気づきのノート」を毎日書いていく事が毎日少しずつの前進に繋がると思う。それが小さな一歩である。

 

小さな力が大きな力に勝るかといったら、そんな時ばかりではないけれども、人が作ってきた道を歩くだけがビジネスではないと思う。僕自身ももちろん取り組んでいるけれども、みなさんも決して他人や他社と比較する事無くこの業界に光をもたらすようなものを創造してほしいと願う毎日である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アパレルは斜陽産業である事に気づく事。

はじめに。洋服に関わる全ての仕事を「アパレル」と一言でまとめてしまうのは良くない気がしています。けれども、僕のお店に来られる販売をやっておられる方々に職業を聞くと「アパレルです」と元気よく答える方が多く、企画、製造をやっているのかと思うと販売をやっているとの事。総称してアパレルと呼ぶ事に僕は少し違和感があるのです。けれどもそれは僕自身の感覚であって、それを受け入れない訳ではありません。

 

ながくこの業界にいるとそんな事が時々起こります。その度に、「いかん、いかん。危うく固定概念の奴にやられてしまうところだった」と思う事にしてます。さて、益々厳しくなるこの業界。その原因は沢山の事が挙げられるでしょう。中には売上げが取れない事に対しての言い訳のような事まで沢山のサイトに書かれています。

 

大手企業に属している方も、地方の専門店で働いている方も、この業界自体が右肩上がりの業種ではない事にまず気づいて頂きたいと思います。特に地方でこだわりを持って運営されている店舗様のスタッフはここを強く意識しなければならないでしょう。何故なら資金が潤沢にある大手企業と違い、地方の小売店はどんなに良いブランドや商品を扱っていても、必ず毎月支払日があり仕入れた分を支払っているからです。

 

これを支払って、店舗を借りているならば家賃を支払って、スタッフの給料を支払っている社長がいる事にも気づいてください。ご自身が後に独立したいと思っているならば、「夢」の前に「どうやって社長は会社運営しているのかな」という部分に目を向ける必要があります。世の中では、一つの事を一言でわかりやすくまとめたいが為に、簡単にキャッチコピーを書く習慣がみてとれます。

 

それを見た時にワクワクしたりドキドキしたりする事は僕にもあります。しかし、その省略された言葉の途中にはどんな言葉が差し込まれるのかを観察する必要があります。これから独立される方には沢山の希望があり、アイディアを良く練ってクリエイトすればそれは素晴らしいものになるでしょう。しかし、どの業種においても基本を知る事は大切です。その基本に自分なりの良く考えられた解釈を加えて技術革新が産まれるのだと思います。

 

と、こんな風に書く事事態が物事を難しくしているのかもしれませんが、頭の隅に置いておく大切な事だと思います。そして、それを知る事で、応用する事で、あるいは他の業種のやり方を組み込んで、この斜陽産業であるアパレルを若い人達のアイディアと行動力で革新を起こしてもらいたいと思いこのブログを始めました。

 

僕は僕で、諦めず自らのアイディアを深く掘り下げて新しいプロジェクトを進めています。その経過や、感じた事なども書くつもりです。何か行動を起こさなければ世界は昨日ままでしょう。僕の進めるプロジェクトももちろん成功させたい気持ちでやっていますが、この業界にとって革命を起こす事のできる力は若い人達であって、僕らのような年代の古株達が「けしからん!」と思うような部分にその力が潜んでいるのだと思います。

 

インターネットが出現してからしばらく経ち、ブログや沢山の記述、そして商品は常に疑いの目を持って見られています。ですから目的をはっきり書く事も時に必要でしょう。このブログの目的は洋服の業界に身をおいている方々が斜陽産業と呼ばれているこのアパレル業界を何とかしようと考えているはずです。その何とかしようを会社単位や組織単位ではなく、(堅い話でなく)気軽に話し合える場を作るのが最終的な目的で書いています。僕のプロフィールはこちらに>>

 

 

それでは。3日に一度は更新しようと思います。